約 730,065 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1341.html
戦うことを忘れた武装神姫 その37 <<その36から。。。<< 外で新聞屋のバッテリーバイクが走り廻る頃。 イオの膝の上で、シンメイは指をしゃぶりながら小さな寝息を立てていた。 「こいぬがえり、と呼ばれている症状のようですね。」 シンメイの頭をやさしく撫でながらイオが続けた。 「極希に、特にマスターを心から慕うハウリンやマオチャオに出現する症状ようです。以前、技研に来たケモテックの技術者の方が言っておりました・・・。」 CTaの所へ遊びに行った際にでも聞いたのだろうか。 「元々ハウリン・マオチャオは寂しがりやなんです。 特にシンメイのような性格だと、寂しさを内にこめてしまう傾向もありますし・・・。」 思い返せば・・・前兆は、確かにあった。 数日前の朝。 普段は食事中にちょっかいを出してくる事がないシンメイが、エルガと一緒に。。。 それだけではない。 一昨日などは帰宅するまで起きて待っていて、いつまでもうしろを付いてきていたっけ。。。 何故、気づいてあげられなかったのか。考え込む久遠に、 「みんな・・・毎日待っていたんですよ、マスターの帰りを・・・。」 といいながら、イオは涙をシンメイの頭の上にぽたりと落とした。 「忙しいのは解りますが、せめて、せめてもう少し・・・。」 ぽたり。 またひとつ、大粒の涙が落ちた。 「私たちのことも、見つめてください・・・。」 ・・・このところ、忙しさに追われ、ろくすっぽ神姫たちに目を向けていなかった。相手にもなってやれなかった。 思い返せばかえすほど、神姫たちがどういう思いをしていたのか・・・。胸の痛みに、思わずイオの顔を覗き込んだ。 ・・・シンメイを抱き、口元には静かな笑みを浮かべるものの、蒼い瞳は涙で潤ませた顔が・・・久遠の心にトドメを刺した。 神姫たちだけではないな・・・。 左手のイオとシンメイを、そっと傍のタオルの上へ乗せ、椅子に深く腰掛け腕を組み目を閉じ。 ただがむしゃらに、必死に走り続けなければならないときもある。 しかし、そんな時だからこそ、自分自身を見つめる瞬間が必要なのかもしれない。 ふと目を開け、右手にまだ残る傷跡を見つめた久遠。 そういえば・・・あの時以来、あいつにも会っていない気がする-。 わずかな間に、なんと大きなものを・・・ たくさんのものを、置き去りにして走っていたんだろう。。。 迷う必要はない。 ここで、一歩踏み出すべきだろう・・・。 イオの頭をそっと撫でて、久遠は立ち上がり。 自室の机の引き出しから、書きかけの書類を取り出し、仕上げにかかった。 -「今」を見直す鍵を開けてくれた、小さいけれど大きな存在に感謝をしながら-。 それから一月の後の朝。東杜田の正門前に、久遠のバイクが止まった。 ヘルメットをいったん脱ぎ、傍らに立つ守衛にIDカードを提示する。 「おはようございます。今日からはゲストカードではなくて、社員証ですね。」 と、ちょっと照れたような顔付きで社員証を受け取る久遠の胸ポケットからシンメイが半身を出し、なんとシンメイも社員証を提示。 「どうぞ今後もよろしくお願いいたします。」 小さく会釈するシンメイは、技研のロゴが入ったスーツを纏っていた。 「おや、これはこれは。 小さな社員さん、どうぞよろしく。」 結局、あの翌日。 久遠は辞職願いを出した。一悶着あったようだが、半ばごり押しの形で・・・。 そして、次なる職場として選んだのが、東杜田技研の関連会社であった。 もっとも、この会社も同じ敷地内にあるのだが。 同時に、神姫たちをアルバイトの形で、毎日誰かを連れていくことに。家で退屈な毎日を押しつけてしまうことなく、刺激的な日常が送れるはずだから、と・・・。 久遠がシンメイを交え守衛と話をしていると、通りから飽きるほど聞き慣れた野太いエンジン音が響いてきた。 「やっべ・・・つかまる前にタイムカードだけでも通すぞっ!」 その音に脂汗をにじませた久遠、大慌てでヘルメットを被りなおす。 シンメイも状況を察し、さっと胸ポケットに収まった。 久遠がフロントを軽く浮かせて敷地内に消えていった直後。 「何も逃げることないだろー!」 GSXに跨ったCTaが、守衛を半ば突破する形で久遠を追いかけていった。 小さい存在が運び、結ぶ、大きな明日。 ・・・かくして、久遠の・・・いや。 久遠たちの、新たなる日常の幕が、上がった。 <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1340.html
戦うことを忘れた武装神姫 その36 日付も変わった深夜。 久遠は、自宅から少しはなれたところでバイクのエンジンを切り、押して駐車場へ。静かにバイクを止め、階段をコソコソと昇り、そっと鍵を開けて部屋に入る。 「ただいまー。」 小さく呟くながらキッチンの明かりだけをつけ、ホッと一息をつく。すでに夕食はコンビニで済ませている。 歯を磨きながらシャワーを浴び、着替えを済ませて静かに自室へと入った。 薄暗い部屋の中、それぞれにクレイドルをおいて眠る神姫たち。イオは机の上で標準型に腰掛けて。リゼは和壱型で布団を蹴飛ばし大の字になり、エルガはぬくぬくこたつから頭だけを出して。 だがー。 シンメイが、いない。いつもはこの辺で寝ているはずなのに・・・。 久遠は音を立てぬように、シンメイを捜索する・・・と。 「なんだ、こんなところにいたのか。」 積み上げられた本の陰で、丸くなっていたシンメイを見つけた。 純正を改造して作ったバケットシート型のクレイドルからも外れ、本とDVDの隙間に入り込むような形で・・・。 「ちゃんとクレイドルで寝ないと、バッテリー切れ起こすぞ。」 そっとつついて起こす・・・と。 「くぅん。。。 ママぁ。。。」 か細い声と共にもそり身体を起こしたシンメイは、潤んだ瞳で久遠を見つめた。 また寝ぼけてるな・・・そう思いながら手のひらを差し出すと・・・何だか様子が違う。 手のひらのニオイを嗅ぐ仕草を見せ、ちょこんと座ると、 「ママじゃないよぉ・・・ママは・・・どこ?」 と、指をしゃぶりながらじっと見つめ続ける。 「えええ!?」 手の上でごろり横になって再び小さく丸くなる。 「ママはどこ? ねぇ、おにいちゃん。」 「い、今はでかけているから・・・しばらくここで休んでいたらどうだい?」 うろたえながらも、久遠が頭を撫でながら言うと、小さく頷いた。 はてさて、どうしたらいいものか。 台所で、コーヒー片手に考える久遠。 左手にはエルガのようにじゃれついてくるシンメイが乗っている。 すでに2時半を過ぎた時刻を指す時計のコチコチという作動音に、時折ちゅっちゅっと、シンメイが指をしゃぶる音が混じる。 何かに怯えるような瞳で不意に見つめるが、そっと頭を撫でてやると・・・緊張が解けるかのように、シンメイの脚の力が抜けるのが久遠の手のひらに伝わる・・・。 こんなことは、今までになかった。 故に、対処方法がわからない。 右手で携帯を駆使して調べるものの、スッキリとした回答が得られない。 傍らに置いた3杯目のコーヒーがすっかり冷めたとき。 「あ、マスターでしたか。」 ふと、足元からの声。 イオが起きてきた。 「物音がしたので気になって来たのですが・・・あら? シンメイ。」 久遠の左手に乗るシンメイに気づいたイオは、もそもそと足をよじ登ってテーブルの上へ。 「こんな夜更けに、何をしているんですか?」 イオが、相変わらず指をしゃぶるシンメイにそっと声を掛けた。 「あ。ママ・・・!」 顔を上げたシンメイがとった行動は、久遠も、イオも、想像もしていなかったことだった。 「ちょ、ちょっとどうしたんですか一体! こらシンメイ!」 ぽふ。 イオの胸に、顔をうずめるシンメイ。 赤子が母親の匂いを確かめるかのようにぎゅっと顔を胸に当てて・・・心底安心したような穏やかな笑顔を浮かべた。 「おかえりなさい、ママ・・・。」 ぎゅっと抱きつくシンメイに、イオもまた困惑した表情を浮かべ、久遠を見つめた。 久遠は、これまでの経緯を -といっても、様子がおかしいというだけのレベルではあるが- イオに伝えた。 すると。 何かを思いだしたのだろうか、久遠からシンメイの笑顔に視線を移したイオの表情が一転、まさに母親のような穏やかな顔付きで、シンメイの頭をそっと抱いた。 「寂しかったのね・・・。でも、もう大丈夫。今夜は、ママがずっと一緒にいてあげますよ。」 こくり。イオの腕の中で頷いたシンメイ。 そして、決して上手いとは言えないイオの子守歌が静かに響いた。 >>続くよっ!!!>> >>その37 へ・・・ <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2275.html
https://w.atwiki.jp/wiki48_seiraijun/pages/19.html
【出展】ニコデモ福音書 【真名】聖ロンギヌス(ガイウス・カシウス) 【マスター】聖槍ロンギヌス 【性別】男 【身長】 【体重】 【ステータス】筋力C 耐久C 敏捷B 魔力C 幸運A 宝具EX 【クラススキル】 対魔力:A 彼本人の力ではなく宝具の力により非常に強力は魔力障壁を身につけている。 【固有スキル】 戦闘続行:A++ 宝具の持つ治癒の魔力により通常では有り得ない程の回復能力を持つ。 具体的には宝具を所持した状態であれば首さえ刎ねられなければOKって位。 浄眼:A++ 在り得ざるモノを見る眼。 盲目である彼が普通に振舞えるのはこの眼の魔力による。 彼はこの眼によってモノの「存在力」を見ることが出きる。 この力により例え不可視の攻撃であろうともその「力の存在」を見抜く。 なおこの眼は心眼(偽A)や千里眼Aをも兼ね備える。 【宝具】 「紅き昏き災禍の魔槍(ロンギヌス)」 ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1-50 最大捕捉:500人 イエスの血を浴びたこの槍は大いなる災いの力を秘める。 槍の穂先が血の様な深紅に染まる時、破滅の力は放たれる。 放たれた力は血の色をした波動となり一軍を呑みこむ。 この一撃を受けたものは生き残れたとしても呪いの力により幸運(luk)をEランクまで落とされる。 さらにこの槍により付いた傷は通常の方法では治癒が出来ない。 「祝福されし奇跡の聖槍(ロンギヌス)」 ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:0 この槍自体は尽きることの無い魔力炉であり、強力な増幅器でもある。 槍を手にしている限りどのような傷でも一瞬で治る。 さらに全てのパラメーターを1ランクUPさせる。 「覇を統べる運命の槍(ロンギヌス)」 ランク:EX 種別:??? レンジ:??? 最大補足:??? 未だ使われたことの無い槍の真の力。 世界を手にすると言われるが詳細は一切不明。 真の槍の所有者の手に収まるとき、この力は使われる。 ゆえに聖ロンギヌスではこの力を使うことは出来ない。 【Weapon】 『聖槍ロンギヌス』 最高位の聖遺物である聖杯と対を成す、聖槍というカテゴリーだけでは収まらぬ神秘の槍。 イエスを刺した槍は彼の血を受け大いなる力を宿すようになる。 曰く槍を手にした者は世界手に入れ、槍を手放した時破滅を迎える。 この槍を巡り幾度と無く「聖槍戦争」が引き起こされたが今だ正式な所有者は現れない。 まだ見ぬ主を夢見て槍は眠る。 その真の力が振るわれるのはいつの日か。 【詳細】 イエスが十字架にかけられたとき、そのわき腹を槍で刺した人物。 聖ロンギヌスと呼ばれる、聖槍の守護者。 聖ロンギヌスは聖槍の所有者ではなく選定者である。 槍を手に入れるためには彼と戦い認められなければならない。 聖槍の精霊である彼は通常のサーヴァントとは違い聖槍がマスターである。 【特記事項】 ロンギヌスです、どうでしょうか? 本人はたいした奴ではなく宝具に超おんぶされてます。 正直オーバースペックしまくりではありますが全ては槍の力と納得してくださいw 言うなればセイバー+黒桜みたいなもんですかね、スペック的には。 【元ネタ】新約聖書 【CLASS】ランサー 【マスター】聖槍ロンギヌス 【真名】ガイウス・カシウス(聖ロンギヌス) 【性別】男 【身長】 【体重】 【ステータス】筋力C 耐久C 敏捷B 魔力C 幸運A 宝具EX 【能力】対魔力A:彼本人の力ではなく宝具の力により非常に強力は魔力障壁を身につけている。 【保有S】戦闘続行A++:宝具の持つ治癒の魔力により通常では有り得ない程の回復能力を持つ。 具体的には宝具を所持した状態であれば首さえ刎ねられなければOKって位。 浄眼A++:在り得ざるモノを見る眼。 盲目である彼が普通に振舞えるのはこの眼の魔力による。 彼はこの眼によってモノの「存在力」を見ることが出きる。 この力により例え不可視の攻撃であろうともその「力の存在」を見抜く。 なおこの眼は心眼(偽A)や千里眼Aをも兼ね備える。 【宝具】「紅き昏き災禍の魔槍(ロンギヌス)」 ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1-50 最大捕捉:500人 イエスの血を浴びたこの槍は大いなる災いの力を秘める。 槍の穂先が血の様な深紅に染まる時、破滅の力は放たれる。 放たれた力は血の色をした波動となり一軍を呑みこむ。 この一撃を受けたものは生き残れたとしても呪いの力により幸運(luk)をEランクまで落とされる。 さらにこの槍により付いた傷は通常の方法では治癒が出来ない。 「祝福されし奇跡の聖槍(ロンギヌス)」 ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:0 この槍自体は尽きることの無い魔力炉であり、強力な増幅器でもある。 槍を手にしている限りどのような傷でも一瞬で治る。 さらに全てのパラメーターを1ランクUPさせる。 「覇を統べる運命の槍(ロンギヌス)」 ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:∞ 最大補足:∞ 未だ使われたことの無い槍の真の力。 世界を手にすると言われるが詳細は一切不明。 真の槍の所有者の手に収まるとき、この力は使われる。 ゆえに聖ロンギヌスではこの力を使うことは出来ない。 最高位の聖遺物である聖杯と対を成す、聖槍というカテゴリーだけでは収まらぬ神秘の槍。 イエスを刺した槍は彼の血を受け大いなる力を宿すようになる。 曰く槍を手にした者は世界手に入れ、槍を手放した時破滅を迎える。 この槍を巡り幾度と無く「聖槍戦争」が引き起こされたが今だ正式な所有者は現れない。 まだ見ぬ主を夢見て槍は眠る。 その真の力が振るわれるのはいつの日か。 【特記事項】 イエスが十字架にかけられたとき、そのわき腹を槍で刺した人物。 聖ロンギヌスと呼ばれる、聖槍の守護者。 聖ロンギヌスは聖槍の所有者ではなく選定者である。 槍を手に入れるためには彼と戦い認められなければならない。 聖槍の精霊である彼は通常のサーヴァントとは違い聖槍がマスターである。 ロンギヌスです、どうでしょうか? 本人はたいした奴ではなく宝具に超おんぶされてます。 正直オーバースペックしまくりではありますが全ては槍の力と納得してくださいw 言うなればセイバー+黒桜みたいなもんですかね、スペック的には。 【宇宙最強】ぼくのかんがえたサーヴァント 二人目【天下無双】 レス番号244
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/562.html
戦うことを忘れた武装神姫 その19 ・・・その18の続き・・・ 名無しとリゼの「勝負」は、開始早々から大変な迫力になった。 リゼがポイントへ近づくや否や、トラップが作動。巨大な落とし穴と、左右 の建物の崩壊。加えて何の為なのか疑いたくなるほどの大量の爆発物。 しかし、リゼはパワーユニットを過負荷使用させ、さらには強化されている ボディを駆使し、回避に回避を重ね、砂埃が収まったときには、名無しの前 に無傷のリゼが立っていた。 「・・・流石ですね。 ならば・・・っ!」 トラップがダメと解ると、今度は3次元の移動 -すなわち立体的な移動- を 伴った スタイルで、ランチャーを打ち出す。しかしこれらも優々と回避され てしまう。 次々に隠し武器を掘り出しては撃ち、砲撃し、斬りかかる名無し。 対して、パワーユニットを背負った鈍重なスタイルで、たった一丁の銃しか 持たないリゼ。 だが、優位に立つのは・・・リゼだった。 ギャラリーも店員も取材陣も、その勝負に釘付けとなった。 このセンター 始まって以来の、最も熱い試合。 まさに武装神姫たる、カッコイイ戦いが 繰り広げられていた。 その光景に、サイトウは言葉を失った。 自分のストラーフは、決して手抜きをしているわけではない。むしろ今まで に見たこともないレベルの動きを見せている。 『そうだ、やつの背中のパワーユニットを狙え!』 サイトウが叫んだ、その時だった。 サイトウの声が耳に届いたかどうかは わからないが、リゼはパワーユニットを・・・捨てた。 『な・・・何だと?』 パワーユニットを捨てた後でも、互角の戦いを見せるリゼ。 かつて自分が 「名無し」であったころの経験に、戦いを忘れていた間に積んだ「日常」が プラスされたリゼは、技のキレも、迫力も、全てが勝っていた。 名無しの武器は次々に撃破・破壊されてしまった。隠し武器もつ尽き、丸腰 になった名無しは、サイトウに声をかけた。 「Mr.サイトウ、これで解りましたか?」 『・・・。』 サイトウは何も答えない。 -いや、答えられない。 「負けを・・・認めなさい。 あなたの下で、私はこれ以上の勝利を収める こと勝つことは出来ません。」 『・・・。』 歯ぎしりをしたまま、押し黙るサイトウ。 その姿を確認した名無しは、 「もう結構です。 -ジャッジシステムへ。当方、戦闘継続不可能。よって 本試合の終了を。」 自ら負けを申告した。 「勝者、リゼ・ストラーフ!! よって、久遠チーム、勝利!!!」 ジャッジマシンが試合終了を告げた。沸き立つ店内。 久遠の元へは、ドッ と取材陣が押し寄せる。 フィールドでは、リゼと名無しが抱き合い、涙を流していた。 「リーダー・・・おかえりなさい・・・。」 「貴女こそ、あの時の言葉の通り、先頭に立てる神姫に・・・。」 その様相に、つられて涙するギャラリーもあり。 そしてサイトウは・・・ 押し黙ったままであった。 「くそっ、ちくしょう!」 サイトウは立ち上がると、足元に置かれた神姫たちの入ったボックスを右足 で蹴り飛ばそうとし・・・誰かにアシを引っかけられてそのまま前に倒れ、 顔面強打。 「話は聞いていたけど、想像以上にアレなヤツだねぇ、あんたは。」 そこに立つのは、いつの間にか移動してきていたCTaだった。 「おまえ、いったい何者だっ!」 「名乗るほどのものではないが・・・一人の神姫愛好者として、今の行動は 許せないなぁ。」 「お前なんかに、勝たなけりゃならない俺の気持ちがわかるものかっ!!」 サイトウが拳を振り上げた、その時だった。 「ぐふっ!」 人垣を器用に抜け出した久遠がサイトウの前に立ち、手首を使い鳩尾に一撃 をすばやく与えていた。 「・・・さすがの俺も、怒るぞ。」 久遠の滅多に見せることのない怒りに、彼の神姫たちも、CTaも驚いていた。 もだえるサイトウ、見た目に依らずヨワゾウだった模様。。。 と、にわかに店の入り口がざわめいた。 やってきたのは、なんと警察官。 わらわらと数人が入ってくると、ずかずかとサイトウを取り囲み- 「ハロルド=サイトウ。窃盗、器物破損容疑、および恐喝容疑で逮捕する。」 「な、何をするんすかっ! 何の権利があって俺を逮捕す・・・」 抵抗するサイトウだったが、CTaが取りだしたものを見るや否や、固まった。 「証拠もなにも、この娘が全部喋ったよ。 データとしても残っているし。」 CTaが取りだしたのは、騎士子のディサだった。サイトウはがっくりとうな だれ、2人の警察官に引きずられるように店の外へと出ていった。 突然のことに何が何やらさっぱりの久遠たち、ギャラリー、そして店員。 「・・・俺はどうしたらいいんだ?」 事情が解らない久遠がCTaに聞くと、CTaは大きな声で言った。 「神姫とそのオーナーが、犯罪摘発に一役買ったよっ!!」 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 昼休みを延長し、久遠の様子を見に来たCTaは、入り口付近で偶然、逃げ出 してきたディサを拾い上げた。最初はオーナーとはぐれた神姫かと思い話を 切り出したが、なんとサイトウの神姫・・・。久遠達の話をすると、ディサ はサイトウに関することをほぼ全て話し、CTaは観戦前に警察へ一旦向かい、 手配をした後に久遠たちの元へ出向いた・・・と言う流れだったようだ。 その後、ディサを始めとした神姫たちの証言と残されたデータから、様々な サイトウの悪事が噴出した。彼は恐喝ともとれる賭け試合で、他人の神姫を 没収したり、あるいは自分より強い相手の神姫を盗みだし、自ら作ったプロ グラムでコアに強制プロテクトをかけ、あたかも自分の神姫のように使い、 勝利を収めていったらしい。 ・・・その結果として、機械としてしか見て いなかった神姫に足を掬われる形となったわけだが。。。 サイトウは全ての罪状を認め、有罪判決を受けることになる。 彼の神姫は没収され、ディサ、ベルタを始めとした盗難あるいは恐喝でとら れた神姫は、元のオーナーへと無事に帰っていった。また、元から彼のもの であったアスタとコリンは、過去を償いたいとのことで、リセットの上M町 のセンター店長が引き取ることに。 いずれの神姫も、CTaとMk-Zの手により、プロテクトの解除だの補修がなさ れて帰っていったことは言うまでもない。。。 その中で、元のオーナーの元へ帰らない選択を自ら選んだ神姫がいた。 元の、リーダーであったストラーフである。 CTaが警察関係者にも働きかけ、なんとか元のオーナーを見つけだすも、彼 はすでに別の神姫と共に新たな生活をしていた。 戦うための神姫ではなく、 子供の遊び相手の神姫を持つ、穏やかな男となって。。。 プロテクトの解除・消去と、修復を終え、CTaと共に元のオーナーに面会に 来たリーダーだったが、彼のその姿に、自らのコアをリセットせざるを得な かったと伝えるよう頼み、自分は会わないと告げた。 CTaは黙って頷き、 付き添いの警官と共に彼の元へ。十数分後、戻ってきたCTaは、リーダーに 一言だけ告げた。 「お前の幸せを祈っているって。 まるで、一人娘が嫁いでいくときの父親 みたいに泣いてたぞ。」 リーダーは、その言葉だけで充分だった。 さようなら、私の心のマスター。 そしてありがとう・・・。 かくしてリーダーは、名目上はコアをリセットされた神姫となり、新たな オーナーの元へ。。。 で、久遠はといえば・・・。 この一件で「神姫と共に犯罪を暴いた男」として一躍時の人に。ワイドショー に出演したり、雑誌の取材を受けたり。彼の神姫たちも、それぞれの雑誌や ウェブTVなどにも出演したらしい。。。 が、それもわずか数週で熱も冷め、徐々に他の話題、情報に埋もれていった。 また目立つことを良しとしない久遠は、熱が冷めるとすぐに、マスコミの前 から姿を消して、いつも通りの生活に戻っていった。もちろん彼の神姫たち も同様に、久遠と何ら変わらない生活に。 戦うことを忘れ、まったり、のんびり・・・。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ あの勝負から1ヶ月が過ぎた。 「みんな用意したかー?」 久遠がバイクスタイルで玄関に立つ。 「はいよー。」 「お待たせしました。」 リゼとシンメイも、バイク対応スタイルで現れた。リゼは、久遠に買っても らった新しいゴーグルを装着。羨ましそうに観察するシンメイ。 「・・・あー、わかったわかった。 帰りにシンメイにも買ってやるから。」 「べ、別に無理に買って頂かなくても・・・」 「いや、しっぽが反応してるし。」 「あ・・・。」 縦に振るしっぽを指す久遠に、あわててしっぽを押さえるシンメイ。 「ずるーい! にゃーにも買って〜!」 「あらぁ・・・マスター、リゼにだけ買ってあげたんですか?」 遅れてやってきたエルガとイオも、嫉ましそうにリゼのゴーグルを指した。 「あー、もう・・・ わかったよ! どうせ早く出るんだ、先に買ってって やるよ、みんなの分!」 「ありがとーございます!」 口を揃えて言う3人の横では、困り果てた久遠の顔にリゼが笑い転げていた。 久遠と神姫たちは、ゴーグルを買い求める為にいったんT市に新しくできた 神姫グッズショップへ立ち寄り、改めて向かうは- -M町のセンター・・・。 M町のセンターには、イベントがあるのだろうか、ずいぶんと人が集まって おり、雑誌社やウェブTVの腕章を着けたプレス関係もちらほら。 久遠たちが着くと、そこで待っていたのは、かえでとティナ、そして・・・ 「お待ちしておりました。」 かえでの肩の上で手を振るのは、頬にマーキングを持つストラーフ・・・、 そう、元の「リーダー」であった。 ・・・>続くっ!>・・・ <その18 へ戻る< >その20 へ進む> <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/857.html
戦うことを忘れた武装神姫・各種設定-2 ちっちゃいもの研の中の人たち。 登場人物 ちっちゃい物研とは 主要技術解説 登場人物 Dr.CTa(木野羽さんご) ちっちゃい物研(下記参照)の研究員 沙羅・ヴェルナのマスター、久遠とは大学の同期(腐れ縁) メカを大事にしない者は大嫌い 愛車は1400ccの国産大型4気筒バイク、ヨツワは無し 沙羅(Sala)(紅緒・改) 好き:青空、白桃缶詰 嫌い:雨(過去の記憶) 属性:熱血 ヴェルナ(velna)(サイフォス・改) 好き:こたつ、みかん 嫌い:孤独(過去の記憶) 属性:頭脳派 アルテミス(Artemis)(ゼルノグラード) 好き:お絵かき(同人誌描き)・模型組み立て(フィギュア) 嫌い:締切を破ること・美しくない造形 属性:腐女子 Mk-Z(水間崎(みまさき)) ちっちゃい物研(下記参照)の研究員 マーヤのマスター(おにいさま) CTaの一番弟子・久遠の高校の後輩 容赦なくCTaに偽名を付与された、お人好し メカを大事にしない者は逝ってよし マーヤ(Maaya)(ツガル) 好き:おにーさま(Mk-Z) 嫌い:納豆(ネバネバするもの) 属性:超絶妹 リーヤ(Lilja)(ジルダリア) 好き:酒 嫌い:乾燥 属性:イケイケ サーヤ(Sarya)(ジュビジー) 好き:マーヤ 嫌い:暑さ 属性:妄想暴走系 係長(Subsection Chief) ちっちゃい物研(下記参照)の開発部係長。 華麗なる独身貴族。ディーニャ(下記参照)の 開発担当のひとり。 酒と温泉があれば幸せ。 ディーニャ(D-Nya)(T-TAK) 「森に住む猫」をイメージし、東杜田技研にて試作された旅サポートMMS。 好き:酒 嫌い:たいくつ 属性:ワガママお嬢 ちっちゃい物研とは ちっちゃい物研とは通称名であり、正式には 「(株)東杜田技研・小型機械技術研究製作部」 という大変に長ったらしい名前。KHINIグループの研究開発部門 が子会社化された会社で、従業員は50人程度。 なので、正職員でも「ちっちゃいもの研」と、名刺に入れる者が いるほど。基本的には医療分野を始めとした各種マイクロマシン の研究を行っているが、片手間に汎用の小型ロボットの研究開発 や改造・修理も請け負っている。 ここで勤務する「Dr.CTa」は医療分野が主な研究分野であるが、 ちっちゃい物研でも指折りのロボット愛好家で、また改造、特に 補修技術に関しては相当の評価がある。(その方面での論文を出 した実績もある程。) ちなみに久遠は、医療分野での絡みから、CTaとの交流を持って いる。(もっとも、先の通りCTaとは大学が同期でもあるのだが。) 久遠の依頼で沙羅、ヴェルナの治療(修復)を行った。また久遠の 神姫達の定期健診も、久遠の「腐れ縁」という立場を利用しタダで させられているらしい。 そのかわり、久遠の神姫に「食物消化-エネルギー変換機構」を搭載 させ実験台としている模様。 主要技術解説 食事機能(久遠・Dr.CTa所有の神姫に搭載されている機能) 食事機能は、Dr.CTaが自らの技術に関する論文を書くために行って いる研究(実証実験)のひとつ。 Dr.CTaは「食事により全エネルギーを賄う」方向と人間(オーナー) との「コミュニケーション手段としての食事」と捉える方向の、二つ のテーマで「食事機能の開発研究」を進めている。 最終目標は上記の2テーマを統合・実用化することであるが、まずは それぞれを「実用」レベルへ持っていくことが目標とか。 ようやく実証実験できるまでこぎ着けたようで、体よく転がり込んだ 久遠の武装神姫、また自らの神姫を用いデータ収集している。 前者の「エネルギー重視型」はCTaの所有する沙羅・ヴェルナに搭載、 味覚センサー等は簡易的な物とされいる。従って、「味音痴の大飯 食らい」とでも言うべき性格である。そのかわり、クレイドルでの 休養(充電)は、データ等のバックアップする間のみ必要なレベルに まで達しているらしい。 いっぽう、久遠の神姫達には後者のコミュニケーション型が搭載され ている。特に味覚を始めとしたセンサー類が充実しており、それぞれ の神姫達に「嗜好」が生じている。しかし、エネルギーの変換効率は あまり向上しておらず、食べたものをエネルギーに変換が『出来る』 程度。当然、食事のみで全エネルギー(電力)を賄う事は出来ず、 クレイドルでの休養は、通常のモデル通り必須である。 <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/450.html
戦うことを忘れた武装神姫 その9 ・・・その8の続き・・・ 「ずいぶんと集まってるなぁ。」 CTaとの会合から数日後。久遠は、M町のセンターに居た。 「ネット上でもずいぶんと話題になっていましたし・・・」 久遠のバッグから顔を出したリゼが言うと、同じく顔を出していたシンメイが、 「さっきその辺で、ここ始まって以来の人の入りだ、とかいってましたね。」 と付け加えた。 「・・・。でもまぁ、いい舞台が出来ていると思えばいいんじゃないかな?」 ちょっぴり緊張した面持ちながらも、いつもの口調で受付へと進む久遠・・・。 あの翌日、仕事から帰った久遠はCTaのアドバイス -といっても酔っぱらいのつぶやきレベルだが- を伝えた。 すでに対戦をすることについては皆了承していたものの、久遠同様どうすればよいか、悩んでいた。 だが。 CTaの言葉の意味は、どうやら神姫達の方が先に理解できたらしい。まだ悩む久遠を差し置いて、神姫達は各々準備に取り 掛かったのであった。 そして・・・。 「待ってたっすよ、久遠さん。」 そこには、先に受付を済ませたトップランカー「サイトウ」が座っていた。 「どうもどうも、・・・サイトウさんでしたっけ。今日はよろしくお願いいたします。 ・・・おや?」 久遠がフィールドに目を移すと、モノブロックフィールドの中に、サイトウの神姫が4体、装備をした状態で待機していた。 「これからウォームアップも兼ねてのデモをするんすよ。 へへ・・・お客も揃ったみたいだからな・・・アスタ、ベルタ、コリン、ディサ! ファイア!」 4体の神姫-白子、黒子、兎子、騎士子-は、それぞれが手にした得物で、的が描かれたキューブを次から次へと撃破、数分であっというまに破壊し尽くした。どよめきと、拍手がわき上がる。 横目で見ながら受付の書類記入をしている久遠の横では、彼の神姫がその様子を、バッグに開けられた小窓から見ていた。 「・・・。」 その猛烈な状況に、言葉が出ない。 「はいはい、おわったよー。」 手続きを終え、久遠が4人を出そうとバッグを開けると、中では隅に固まった4人が。泣き顔になっているシンメイは、白いハンカチを用意し、棒っきれに結びつけようとしている有様。 「ま、ますた〜・・・。」 「だー! 今更何やってるの!」 作りかけた白旗を取り上げる久遠。 「だって、あんなの反則だよぉ・・・」 と、リゼが言いかけたとき。 「久遠さん、本当にやるんですか?」 と、聞き覚えのある声。 かえでだ。 「お、かえでちゃんか。」 「あんな攻撃のできる相手ですよ、本当に、本当に大丈夫なんですか?」 心配そうなかえでのその声に・・・ 「まーっかせなさーい!!」 突如、カバンの中からリゼが飛び出した。どこで仕入れたのか、或いは作ったのか、妙にカッコイイサングラスを着け、いつのまにかこさえた「にくきゅう」隊のジャケットをまとった、いかにもな姿で-。 かえでの声に、久遠の言いつけ、「ヒーローであり続けること」を守ること、何故この場に来ているか・・・を思い出したリゼ。久遠を見つめる目に、もう迷いはなかった。 それを見た久遠は、ひょいと持ち上げて自らの肩の上に。 「絶対に負けないよ。 あたしたちは最強の神姫戦隊、にくきゅう隊だ!」 その様子に、エルガが先ず反応した。 「にゃーん! キッチンの山猫、エルガなのー!」 リゼと同じ服装ではあるが、きっちり自前のヤンチャオを装備し、手には包丁(模造)という、誠に不思議なスタイルで飛び出してきた。 「料理は愛情、心を込めて! にゃっはー!!」 さっと飛び上がると、久遠の肩の上に乗った。 ざわめくギャラリー。 「よいしょっと・・・ ふぅ、そろそろ私の順番ですか? え・・・あらまぁ、こんなにも大勢の皆様に見に来て頂くなんて・・・は、はわわわっ!」 のっそり顔を出したイオは、久遠の肩に乗ろうと飛び上がったのだが、お約束どおり、バッグの足を引っかけてあらぬ方向へ・・・ だが、かえでがナイスキャッチ。 久遠の方に無事乗せられた。と、ぱっとバッグから光とスモーク。 「傷つき倒れ、悲しむ神姫の呼ぶ声が・・・ならば私が行きましょう、たとえそこが地獄でも!! はぁっ!!」 かけ声ひとつ、一気に飛び出し久遠に飛び乗ったドクタースタイルのシンメイ。 「ささ、総司令。 お願いしますよ。」 急にノリが良くなっているシンメイ。やはり、こういう場面で姉御肌のリゼが引っ張る力というのは大きいんだなぁ・・・と、しみじみ感じつつ久遠はリゼと打ち合わせ通りに続けた。 「つーことで、にくきゅう隊、ただいま参上ですー。 い、いでででっ!!」 「ヌ・シ・さ〜ん〜!! あたしたちがここまで決めたのに、何だそのやる気のない締めはぁ〜〜!!!」 久遠の言い回しに納得行かなかったのか、リゼは思いっきり耳を引っ張る。 「わ、わかった、わかったから引っ張るんじゃない!!!」 「わかればよろしい。」 その様子に、かえでを含め、見ていたギャラリーが一斉に和む。 久遠たちは取材に来ていた雑誌社やミニコミ誌、果てはケーブルテレビの取材まで受けるはめに。 彼らが想像していた以上に、ウケが良かったらしい。 昔はこうしたイロモノは多かったのに・・・と思いつつも、にこやかに取材に応じる久遠、ギャラリーに囲まれちょっとした撮影会になる4体の神姫。 フィールドの脇では、完全に蚊帳の外となったトップランカー・サイトウが、彼らを嫉妬の目つきで眺めていた。。。 やがて、試合開始の時間がやってきた。 アナウンスが入る。 -「久遠 VS サイトウ、まもなく開始します」- ・・・>その10へ続くっ!!>・・・ <その8 へ戻る< >その10 へ進む> <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/555.html
2月14日の武装神姫-03 「ただーいま。 おとなしくしてたかな〜?」 久遠、帰着。 手にする紙袋には、半額売りされていた特大のチョコレート ケーキが入っている。。。 「おかえりなのー。」 と、出迎えるエルガ。 とりあえず室内の様子を探る久遠。 「? にゃーさん、どうしたの?」 「いや・・・去年のことがあるから・・・」 「にゃーん。 もうにゃーたちだけで作ったりはしないですよ〜。」 「良かった・・・ ってちょい待ち! 今、『にゃーたちだけで』は作らな かった、って言ったよなぁ?」 「にゃっ!! い、いってない! 言ってないのっ!」 「なんか隠しているだろう。」 入室拒否しようとするエルガをむんずと掴んで、ずかずかと部屋に入る久遠。 部屋の中で変わった様子はない・・・ 次、キッチン!・・・も異常なし、か ・・・いや、異常発見! 「チョコレートと油のニオイがするぞ。」 聴覚と嗅覚には自身のある久遠、聞き耳を立てる。久遠の手の中では、エルガ が冷や汗ダラダラ。。。 かたり 「そこだっ!!」 バタン! 戸棚の下の戸を開けると、そこにはシンメイ、イオ、リゼの3人と、 沙羅とヴェルナと・・・メイド姿のCTaが、かなり無理な体勢で収まっていた。 「・・・お前ら、何やってるんだ?」 驚くよりも、まずはそのスタイルに呆れる久遠。 「どこから説明したらいいかなー・・・とりあえずヌシさん、悪いけどCTaの ねーちゃんを引っぱり出してくれないか? 無理矢理つっこんだら、出せなく なっちゃった・・・」 珍しく困惑した表情で、かつストレートにお願いするリゼ。 確かに、CTaの 顔色も・・・良くない・・・ 「って、呼吸困難になってるじゃないかっ!」 手にしたエルガをほっぽりだし、大慌てでCTaを引きずり出す久遠。だがどの ように入ったものか、なかなか出てこない・・・ 数分後。 「はぁ、はぁ・・・ 死ぬかと思った・・・」 飛びかけていた意識がようやくハッキリしたCTaは、久遠から受け取った麦茶 を飲みながら、 「だから、バレンタインじゃない、今日は。だからちょっとどっきりイベント をしようと思って、先にあがって作業をしていたわけ。」 等と、経緯を説明していた。 「先回りも何も、俺の部屋にピッキングで入る時点でどうかと思うが。しかも 機械油くさいメイドのままだろ?」 「細かいことは気にしなーい。」 「そういうレベルじゃないって、犯罪だってば。」 「まぁまぁ、あたしとあんたの仲じゃないか。つーことで、はい義理チョコ。」 半ば強引に丸められた気が・・・と苦笑いする久遠に特大のチョコが渡された。 「あとはあんたの神姫たちの本命チョコがあるぞ。 今年はあたしが監修した から、神姫の脚とかは入ってな・・・」 と言うが否や、イオの酒瓶による一撃がCTaの後頭部に炸裂。声もあげられぬ 程の痛みなのだろうか、その場にうずくまるCTa。 その姿に沙羅がぼそり。 「イオぉ、気持ちは分かるっすけど・・・ あ、すんまそん。。。」 だが、イオの怒りの涙目に謝り小さくなる沙羅。 さらに十数分後。 久遠に冷却パックをもらい後頭部に当てて、イオたちに一言二言告げたところ で、CTaは仕事の続きがあるとのことで、メイド姿のままで帰っていった。 「はぁ・・・何だったんだ? ったく・・・。」 CTaと沙羅・ヴェルナを送り出し、再び部屋へ振り向くと、目の前にふよふよ と浮かぶイオ。 「マスター、いつもお疲れさまです。これ、私たちの気持ちです。受け取って 下さい〜!」 と、足下ではシンメイとエルガが、テーブルの上ではリゼが、それぞれにハコ や包みを用意していた。ちょっと照れたそぶりでリゼが、 「どっきり大作戦は失敗しちゃったけどねー。」 と言うと、シンメイも続けた。 「今年は昨年のようなことがないようにと、CTa姉様が手伝って下さったので 大変に良いモノが出来ましたよ。」 皆からものを受け取り、さっそく開く久遠。昨年のように大きなもはないが、 下手な洋菓子屋よりも手の込んだ「作品」であった。 リゼは、生チョコ風に仕立てたのハート型。 イオは、自らの顔をモチーフにした彫り物。 シンメイは、完全な球形のマーブル柄のチョコ。 エルガは、にくきゅう型のクランチチョコ。 いずれも食べるのが惜しいくらい。 「あんれまぁ・・・ 本当にお前たちが作ったのか?」 頷く4人。自称、彼女いない歴=年齢な久遠、 「2年連続で、こんな形でチョコもらえるなんて・・・ 俺ぁ嬉しくて・・・」 と、涙を浮かべる。 ふらり立ち上がった久遠は、自室へ入り秘蔵のシングル モルトを持ってきた。 「嬉しくてたまらない!今日は飲むぞ! つまみはチョコとこのケーキだっ!」 テーブルに、酒瓶とケーキと、神姫たちのチョコが並べられた。 「にゃーん!! そんなに喜んでもらえると、にゃーもうれしいのだ!」 久遠に飛びつくエルガ。 それを引き剥がそうとするシンメイ。 「あっ! マスターの独り占めは許しませんよっ! エルガ、離れなさい!」 片やこちらでは、 「そうだイオ、ナッツ持ってきてよ。 あたしゃ漬け物出すから。」 「そうですねぇ・・・リゼ、漬け物じゃなくて氷の支度をお願い。」 と、飲みモードに突入しているお二人。。。 かくして、久遠と神姫たちの、2月14日の夜は更けていく。。。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「どれっくらい呑んだんだろう・・・。」 深夜。 テーブルに突っ伏したまま寝てしまった久遠、のどの渇きて目を覚ま した。 散乱する酒瓶、空き缶。 ケーキの皿は見事に空っぽ。 だが、神姫 たちのチョコは・・・ すべてきれいなまま。 久遠は、勢いで食べることは しなかったようだ。 「これは・・・ 静かに、ひとりでうれしさを味わいたい時に食べようかな。」 麦茶を飲みながら、ハコや包みに戻し、自室の机の上へ置いた。 と、その時 ふと思い出した久遠は、 「そういや木野羽のやつ、何を作ったんだ? 義理チョコっていうには・・・」 先に渡されたCTaの包みを開けた。 「あいつ・・・。どこが義理チョコなんだよ。 食えないじゃないか、こんな もの・・・。」 デスクライトで照らし出されたそのチョコには、久遠の神姫たち4人と沙羅・ ヴェルナの顔が実に美しく描かれ、真ん中には小さく「Love for YOU」。。。 久遠はふっと息をつき、イスに腰掛けて笑みを浮かべると、机からミニチュア ボトルとショットグラスを取りだし・・・ CTaのチョコを目前に置き、それ を眺めながらグラスを静かに傾けた。 同時刻、東杜田の片隅。 工場に隣接する公園のベンチ。着込んでモコモコになった木野羽は、ポケット にちいさな2人を入れて、缶ビール片手に3人で夜空を眺めていた。 届け、ちいさなものに乗せた、あたしの想い-。 今日は2月14日。 大切な貴方へ、想いを伝える日-。 <トップ へ戻る<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1103.html
武装神姫のリン 鳳凰杯篇 その5 あちらはマスター同士、こっちは神姫同士ということで私は部屋から逃げ出てしまったミカエルを追います。 互いに死力を尽くした(精神的に言えば彼女はもっと苦しかったと思います…)バトルの直後で"疲れ"が出ている頃。 それほど遠くには行けないと解っていてもミカエルとの距離が一向に縮まらないことでやはり私は焦りを感じてしまいます。 身体の状態など気にしないほど悲しみは彼女の心を支配しているはずです。 なぜなら、その悲しみは想像しただけでも恐ろしく神姫にとっての絶望そのものなのですから。 彼女をそのままで終わらせるのは"約束"をした仲の自分が許せない。だからこそ私ももう一度気を引き締めて必死に彼女を追います。 とその瞬間ミカエルが通路を横切ったスタッフにぶつかりました。 「うわ!」 その拍子にスタッフの持っていた工具箱。そこから無数の工具がバランスを崩し、ミカエルに向かって落ちていくのです。 ミカエルはぶつかった弾みで腰が抜けたのか、動きません。落ちてくる鉄塊を見上げることしかできないのです。 「届いて!」 私は渾身の力を込めてミカエルに向かって飛びかかります。 ほんの少しでも彼女の身体をかばう。もしくは押すだけで致命傷は避けられるはず。 自身の安全を優先するプログラムが動きを妨害しようとしますが、瞬時にそれを解除。 そうして…ミカエルの身体に私の手が… "ガシャン" そんな音を聞いたのを最後に、私の意識はそこでとぎれてしまったのです。 私が目を覚ましたのはそれから数時間後、会場に設営された神姫のメンテナンスを行う"救急救護室"のベッドの上でした。 「気分はどうだ?」 マスターがいつものように、でもやっぱり心配そうな瞳で声をかけてくれました。 「心配したんだからね~」 「寿命が縮みましたわ」 「…おかあさん、よかったぁ!!!」 花憐が飛びついてきます。どうやら家族全員に心配をさせたみたいで…そこでミカエルの無事が気になりました。 「マスター、ミカエルは?」 「ああ…」 みんなの表情がすこし曇ります、まさか… 「いや、リンが思っている様な最悪の事態にはならなかったんだけどな」 「なら…」 「記憶が…無くなってるんだ。」 その言葉を聞いた瞬間、私の"心"が痛みを感じました。 心の中に何かの間違いだとそれを拒絶する自分が居て、でも一方で現実を受け入れている冷静な自分も存在している… その2つがぶつかった様な、そんな感じでした。 「そんな…全て忘れてしまったのですか?」 「いや、自分の名前と事故の直前のこと。つまりリンが助けようとしてくれたことは覚えてるらしいんだけど他のことがさっぱりだ」 「自分のマスターが誰であったかさえも分からないのですね」 「…そういうことだ。」 「では、彼女はどうなるんでしょうか」 「引き取り手が無い場合は…施設行きだろうな」 「それも彼女にとっては悪いことではないと思うんだけどね…」 「茉莉の言うことも正論だと思いますが、でも!」 「リンの言いたいことは分かってるよ、あの子をティアみたいに引き取れって言うんだろ?」 「そこまで分かっているなら!」 私が次の言葉を発する前に救護室のドアが開かれた 「失礼します。」 それは映画やTVで見たことのあるSPそのままの人だった。 その人は、かけていたサングラスを外してお辞儀をしました。 「あんたは…」 「はい、鶴畑家の直属のSPを努めております。 岩原と申します。」 「何の用ですか?鶴は他のSPともあろう人が。」 茉莉もあの人を少々警戒しているようでした。 マスターも、茉莉も、もちろんティアも。時間が結構経ったとはいえあの騒動を皆忘れてないのです。 しかし岩原の口から出た言葉は意外なものでした。 「今回は、お願いがあってお伺いしたのです。」 「なに…?」 「ミカエル…彼女を引き取っていただきたいのです。」 「どういうことだ?」 「全ては、大紀様の願いです。大紀様は今までのことを反省しております。よほどあなたの説教が効いたのでしょう。」 コレにはみんなが驚きました。なんというか、あの人に対してはみんな「イヤミな金持ちのボンボン」というイメージしか無かったためにマスターの説教(まあ、これはマスターの癖というか性格なんでしょう。マスターは極上のお節介ですから。)を素直に聞くようには思えないのですが… 「あ、そういえば最後にそれらしいこと言ってたな。その後すぐにリンとミカエルが大変だって聞いて忘れかけてた。」 「亮輔、もしかしてすごいことしちゃったんじゃない?」 「…そうかも。」 「おとうさんすご~い」 花憐はマスターに飛びつきました。全く、この子は…とも思いつつ私マスターに抱きつければなぁなんて思ったり。 「大紀様は一からやり直そうと思っておいでです、そのためにもしミカエルが自分を認めてくれるのであればと最後の望みをかけておりましたがこのような事態になり…そして唯一残っている記憶に関連のある、あなたたちに彼女を任せたい。とおっしゃっています。」 「…話は分からなくもないのですが、ではなぜ本人が出てこないのかしら?」 そのことについてはちょっと気になっていましたが、その疑問をティアが岩原さんにぶつけました。 「もうしわけございません、先に仰っておくべきでした。 大紀様は「彼女への自分なりの償いだ」と仰いまして今までの武装データをディスクメディアにコピーする作業に没頭しております。そのディスクメディアはあなた様に渡すためとも仰っておりました。」 「で、自分の神姫はどうするんだよ」 「今までのように大量に起動させた中から能力だけで選ぶのではなく、自分で町を歩き、これだと思うパートナーを見つけるそうです。」 「今までのランクポイントは?」 「廃棄されると。」 「…なら、なおさらミカエルを受け取るわけには行かないな。」 マスターはそう岩原さんに告げます、それは私が今言おうか迷った言葉でした。 「なぜですか? 彼女にはあなた様の元で幸せになって欲しいと…それが」 「記憶が消えた…それがどうした。 外的損傷も無いし機能も正常。ならきっと思い出せる。そして全てを思い出した時にマスターが居なくてどうするんだ!」 「ですが…」 「とりあえす本人を連れてくるんだな」 マスターが岩原さんに食ってかかる寸前。 「その必要は、無い。」 鶴畑大紀がこの部屋に入ってくるなり、マスターの正面に立って言いました。 「あんた、さっきの話はつまり俺に"ミカエル"ともう一回最初からやれってことか」 「そうだ。それが一番、あの子にとって良いはずだ。」 「…」 鶴畑大紀は黙ったままどうするべきか考えているようでした。 そうして部屋野中は無音に、誰もが口を開けない…そんな中 「じゃあ、本人に決めてもらおうか」 急に茉莉が言い出したのでマスターも、ほかのみんなもびっくりしてしまいます。 「ああ、それが一番手っ取り早いかな」 「ですね。」 私もそれに賛同します。 そうしてミカエルが寝ている部屋に皆で行くことに。 記憶に残っている唯一の"知人"ということで最初に声をかけるのは私ということになりました。 眠っているミカエルのそばに寄り添い、優しく声をかけます。 「ミカエル、起きて。」 ゆっくりとミカエルのまぶたが開き、意識が覚醒していくのが分かりました。 「…リン」 「そう、リンです。あなたの友達の、リンです。」 「なんの、用?」 「それなんですが、あなたは私の子と以外を忘れていると聞きました。本当にそうですか?」 「…うん、何も思い出せない」 そうだと分かっていても本人から肯定の言葉を聞いたことでショックを受けました。でも私にはまだやるべきことが残っています。 「そうですか、私の家族や友達も来ているのですが、部屋に入ってもらってもいいですか?」 「うん、いいよ。リンの友達なら」 私の合図でマスター達が部屋に入ってきました。 「こんにちは、リンのマスターの藤堂亮輔です。よろしく。」 「私は亮輔の家族の茉莉、そしてこっちが」 「ティアですわ、よろしくおねがいしますわね。」 「花憐です~よろしくおねがいします~」 「あ、はい。よろしく」 ミカエルは一見すると感情が無いような、そんな目でマスター達の後ろにいる鶴畑大紀を見つめています。 彼女の反応次第でミカエルが私たちとともに来るのか、元のマスターの元へと戻るのかが決まるため、みんな固唾を飲んで見守っています。 1分ほど見つめた後、ミカエルの口が不意に開きました。 「そっちのお兄ちゃんたち…は、だれ?」 『やはりダメだったのか』そんな雰囲気が部屋中を覆おうとします。 しかしミカエルの言葉はまだ続いていました 「なんだか、見た目は怖いのになぜかお兄ちゃんのことが怖くないって分かる。後ろの男の人も。」 「…み、ミカエル。」 鶴畑大紀はその言葉に、人目もはばからずに目に涙を浮かべています。 なぜか後ろにいる岩原さんまでサングラスごしにハンカチを目尻に当てている。 「なあ、ミカエル。 俺と一緒にいてくれないか?」 「なんで?」 「えっと、俺が、一緒にいたい、から」 「…」 ミカエルは少々困った顔をして私に聞いてきます。 「私、どうしたらいいいんだろう?」 「ミカエルの思う通りにすればいいんですよ。」 「…わからないよ。そんなの~」 この状況は予想していませんでした、今のミカエルなら私が誘えば絶対に私たちについてきます。 でも、マスターがさっき言った様にそれはミカエルにとって最善のこととは思えないのです。だからこそ、心を鬼にして私は彼女を突き放します。 「…リン!?」 「世界はそこに生まれたモノを拒んだりしません、それは人、動物、神姫どれも同じです。だからあなたが望むままに生きて、そして自分で決断する勇気を持ってください。あの人について行くか否か。この選択はその最初の一歩です。どっちを選んでも誰もあなたを責めたりしません。だから。」 私は思いの丈を彼女にぶつけました。 あとは彼女次第です。私たちはミカエルの決断を待ちます。2分、3分、5分と時が過ぎて… 「決めた、私。そのお兄ちゃんと一緒に行く。」 「…ありがとう、ミカエル。」 その一言と同時に鶴畑大紀は泣き崩れ、岩原さんは彼を支えています。 そしてマスター達もミカエルがちゃんと決断できたことを喜んでいます。 「な、大丈夫だって言ったろ?」 「私が言い出さなかったら今日中にここまでいかなかったんじゃない?」 さりげなく茉莉がマスターにご褒美をねだっていますね、私には分かりますよ。だって家族ですから。 とりあえず、私もがんばったのでご褒美をもらっても良いはずです。だから私もさりげなく茉莉に便乗させてもらいます。 「茉莉、でもそれは私も考えてたのですが、突然茉莉が言ってしまってみんなをびっくりさせてのですよね…私は皆さんを動揺させずに言えるか結論をだした瞬間に」 「え!? ホント?」 「私は嘘は言いませんよ、ですよねマスター?」 「あ、ああ。ソウデスネ」 マスターはこの後の子とを考えて頭がフリーズしてしまったみたいですね。 今日の夕食とデザートは豪勢なものになる予感がします。 「あ~~~~~~~!!!!しまった!!」 突然マスターが大声を上げました。 何かだいじなことを忘れていたのかもしれない、それが致命的なことだったら…そんな怖気が身体を駆け巡り、私は強い声でマスターに聞いたのです。 「マスター!? なにが!?」 しかしマスターの表情はすぐさま軟らかい?というか負い目を感じてるようなものに変化。そして。 「リン、すまない。鳳凰杯の次の試合だったんだけど連絡もしてなくて棄権扱いになったw しかも連絡してないから俺のランクポイントが10減少っていうペナルティ付きでなorz」 こんな一言で返すのです。 そこで茉莉が思い出したように手をたたきました。 「あ~、あの放送ってやっぱり亮輔のこと呼んでたんだ」 「お姉様が心配するあまり、先にやるべきことを忘れてしまう…ご主人様の悪い癖ですわw」 「あ、そうか鳳凰杯の予選とミカエル戦でポイントは8稼いでたはず…マイナス2ポイントなら我慢できるな…」 「マスター、私はミカエルを救えただけで十分に満足です。ですから…今度からはそういうことは早く言ってくださいね。」 ミカエルに関することで無くて安心しつつも、こっちも十分に大事なことだったのでやんわりとマスターをしかってあげました。 そして私は茉莉にウィンクを。それで事情を察した茉莉も 「そうそう、ハッピーエンドってことでみんなでご飯食べに行きましょう~全部亮輔のおごりね」 「…ああ、ヨソウハツイテイマシタカラゴジユウニシテクダサイ」 準備を終えた鶴畑大紀の肩に乗っていたミカエルが私に声をかけました。 「リン、また遊んでね?」 「はい。ミカエルもお元気で。」 「うん、また。」 これは私とミカエルの始まり。そして 「今回は、世話になった。 いや。なりました。地道にがんばります。」 「ああ、がんばれよ、兄貴に負けるな。」 「でわ…」 マスターと鶴畑家との奇妙な関係の終わりであり、言い方を変えればこれも始まりかもしれません。 こんな感じでいつも通り、何かしらの騒動に巻き込まれてそれを解決(?)して私とマスター、そしてみんなの鳳凰杯は幕を閉じたのです。 マスターの財布の中身が一気に3桁台になるという悲劇?いや喜劇ですね。と一緒に… ~武装神姫のリン 鳳凰杯篇 Fin~
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/632.html
戦うことを忘れた武装神姫 その23 とある強雨の深夜。 本業の資料作成の締切が間近に迫り、久々の徹夜残業。 打ち出した配布用 資料の最終チェックを・・・と思い目を通していた、その時だった。 「ぅ・・・うわあぁああぁぁぁっっ!!!」 悲鳴を上げて、傍らの和-2型の試作クレイドルで寝ていた沙羅が、叫びと共 に飛び起きた。 あたしも驚き、イスからずり落ちてしまった。 「あ、すんませんマスター・・・。」 「・・・。 どうした、お前がそんなに叫ぶなんて珍しいじゃないか。」 体を起こしクレイドルを見ると、震えながら、まるで雨に打たれて飛べなく なった雛鳥のような目の沙羅があたしを見つめていた。 「今・・・またあの夢を見たっす・・・」 そっと沙羅を抱き上げ、手の上に載せた。 「そうか・・・。」 あたしの手のひらの上でも、こいつのふるえは止まらなかった。 - 迫り来る刃 - - 私と同じ姿の者に貫かれ - - 動かすこともままならぬ躰 - - 冷たく、哀しい涙のような雨 - 「あの」夢を見た後、必ずと言っていい程、沙羅が呟く言葉。 間違いなく、 久遠たちに救われる前の記憶なのだと思うが・・・。 敢えてあたしは聞く ことはしない。 どれほどに痛ましく哀しい事であったかは、聞かずとも、 十二分にわかるもの。。。 油と金属粉と有機溶媒でガサガサになった手だけれど、沙羅をそっと包んで やる。 「お仕事中じゃないんすか? マスター・・・」 「いいってことよ。 もうちょっと、こうしていようか。 そうだな・・・ 雨が止むまで。」 「そ、そんな・・・もう落ち着いたっす、仕事の続きを・・・」 「だーめ。 まだ膝が震えてる。 それなら・・・」 手の中から抜け出そうとする沙羅をあたしは抱き上げ、胸ポケットへそっと 入れた。 「ここでなら・・・寝られるか?」 実はこんな事もあろうかと、両の胸ポケットは充電クレイドル機能となって いる。もちろん、ふにふにクッション内装仕様。。。 すっと収まった沙羅 は、ちょっと顔を赤らめて小さく頷いた。 「ここならあったかくって・・・大丈夫っす。。。」 小さな身体を、もぞもぞとポケットの中へと潜り込ませる・・・と、反対側 の胸ポケットから、ヴェルナが顔を出した。 「あら・・・沙羅もですか?」 「ヴ、ヴェルナ?!」 ・・・そうなのだ。沙羅が飛び起きる少し前、ヴェルナもまた夢にうなされ 飛び起きてきたのだ。 ヴェルナは、お気に入りのイルカの抱き枕を手に、 ナイトキャップの装い。 「ったく・・・世話の焼ける神姫たちだよ。。。」 すっかりぬるくなった缶コーヒーをすすりながら、あたしが呟くと、 「すみません・・・」 「申し訳ないっす・・・」 ポケットの中で小さくなる2人。あたしはヴェルナの頭をグリグリと撫で、 沙羅にはお気に入りのキツネのぬいぐるみを手渡した。 「いやいや、謝ることはないぞ。 お前らみたいな、哀しみを背負ったちっ ちゃいものを救うこともあたしの仕事だと思っているんでね。 とはいえ、 今のあたしに出来ることっちゃー、このくらいだけどね。」 そう言うと、ヴェルナはぎゅっと服に顔をうずめ、 「ううん・・・最高の暖かさです・・・。」 と言った。 ここに来てからだいぶ経つが、2人ともずいぶんと変わった。来た当初は、 いわゆる人間恐怖症のような部分もあったが、最近では来客の相手をする程 だもんなぁ・・・。 だけれども、何か足りない気がする。 思わず沙羅の 顔を凝視してしまうあたし。 「・・・。」 「ウチの顔に何か付いてるんすか? マスター。」 そうか・・・。 足りないもの・・・。 「なぁ、お前らさぁ。 そろそろ家族増やさないか?」 「えっ! マスター、結婚するんですか?」 「ちゃうわい! 久遠の所のイオのボケがうつったのかと心配になるような 発言をするんじゃない。 神姫の方だ、神姫の。」 「・・・!!」 2人の目が輝いた。 思った通りだ。 確かに、客の出入りや久遠のところ の4人、Mk-Zを始めとした社内の神姫組と、交流のある連中が居るにはいる のだが、こいつらの日常の相手をしているのは、ほぼ、あたしだけ。 久遠 が、何故4人も置いているか、少し分かった気がした。 「近々、Mk-Zも新しい仲間を連れてくるそうだ。 対抗するわけじゃない けれ・・・」 と、あたしが言いかけると、両のポケットの2人は身を乗り出して我先にと 訊いてきた。 「マスター、名前はどうするんすか?!」 「どの子が来るんですか? 猫爪ですか? アーンヴァルですか?」 「だー! まだ、まだだってば! 予算も立てて無いのにっ!」 もう、仕事どころではなくなった。 結局、この後数時間、2人とのハナシ に付き合うハメになった。 とはいえ、今まで2人の「寂しさ」に気が付い てあげられなくて申し訳ない気持ちもあったし、あたしもまた、神姫家族を 増やしてみたい気持ちもあったし。。。 話は盛り上がり、仕事にようやく戻ったのは丑三つ時を過ぎた頃。ポケット には、キツネのぬいぐるみを大事そうに抱きかかえた沙羅、イルカの抱き枕 をぎゅっと抱きしめるヴェルナ・・・ 2人ともまるで仔猫が母の元で眠る ような笑顔を浮かべ、小さな寝息を立てていた。 どんなに忙しくても、どんなに辛くても。 あたしには、その笑顔がそばに あれば、それだけで充分な気がしてきた。 さーて。 週末は・・・久々の大口ショッピングだなっ! <その22 へ戻る< <<トップ へ戻る<<